宮崎義憲先生(東京学芸大学名誉教授 医学博士)のコラムを紹介します。(PARTNER 2018 6月号)
肩こりやボケ防止にも効く下半身強化のヒミツ
年齢を重ねるにつれ、階段を上がっているときに足が重く感じられたり、息が上がりやすくなります。特に日ごろ運動をしていない人に、こうした傾向が見受けられます。
その原因のひとつと考えられるのは、腿やふくらはぎなど、下半身の筋肉の衰えです。
もし、階段で辛さを感じるようになったら、下半身の筋肉の衰えとともに、全身の老化が本格的に始まりつつあるのだと認識してください。
あまり知られていないのですが、実は下半身の筋肉は、上半身の様々な部位に影響を与えています。中高年の肩こりやボケなど脳の老化も、下半身の筋肉を鍛えることで予防策となることがわかっています。
もともと下半身には、全身の約3分の2を占める筋肉が集まっています。そして、それらの筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、下半身の毛細血管に送られてきた血液を心臓に送り返しています。つまり強力なポンプとして機能しているのです。
下半身の筋肉が衰えポンプ能力が落ちると、体全体の血液の流れが悪くなっていきます。すると、距離的に離れている首や肩周りでも、疲労物質である乳酸が蓄積されてしまい、肩こりにつながってしまうのです。
ボケ予防になる理由は、下半身の筋肉の特性が関係しています。筋肉は、瞬発性運動に適した白肉と、持久性運動に適した赤筋の2種類に大きく分けられます。このうち赤筋は、収縮する際に脳幹の中枢に刺激を与え、大脳を覚醒させることがわかっています。下半身には白筋よりも赤筋が多いので、鍛えて筋量を増やすことで大脳を覚醒させる効果が高まり、ボケ防止の効果が望めるのです。
すでに、ゴルフヤテニスなどを嗜んでいる人の場合は、フォームの崩れを防ぐ効果があります。例えば、ゴルフで後半にスコアが下がりがちな人、テニスでセットごとに返球が乱れやすい人は、下半身の筋力が衰えている可能性があます。筋肉は3週間使わないと衰えてしまうので、月に1回のペースでコースやコートに出る人は、意識して下半身を鍛え直すことをおすすめします。
鍛える時間をしっかりとれない場合は、日常生活を少し変えるだけで大丈夫です。駅から自宅までの帰路で坂道を選んで歩く、マンションの2~3階分を階段で上がる、といった程度でもトレーニングになります。
自宅でできる方法としては、壁に手をついて片足立ちになり、床に付けた足を軽く曲げるスクワットを左右それぞれ20回行なう方法がいいでしょう。膝への負担が大きくなりすぎないよう、90度よりも深く曲げないのがポイントです。このトレーニングはテレビを見ながらでもできるので、ぜひ試してみてください。