近年、糖質制限というキーワードが注目を浴びています。今回は運動生理学の専門家、生活習慣病に関しては第一人者の森谷敏夫先生の著書からご紹介いたします。
糖質制限で「何が」減るのか?
炭水化物は、たんぱく質、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつで、体内の消化酵素では消化できない食物繊維と、食物として体内に取り入れられエネルギー源となる糖質とで構成されています。
この糖質を制限すると、確かに体重は減ります。2週間で2㎏、1か月で5㎏減る場合もあります。問題は何が減ったかです。実は、糖質制限だけでは脂肪は余り減りません。減ったのは大部分が「水」です。
人間の脳と筋肉は、大量の糖質をエネルギー源として使います。不足すれば肝臓や筋肉、脂肪において4倍の水と結合しているグリコーゲンを分解してブドウ糖に変換します。炭水化物の摂取を控えると体重が減るのは、分解したグリコーゲンの水分が出ていくためです。糖質が更に足りなくなると今度は筋肉が自身を分解してブドウ糖をつくります。これを繰り返すと、脂肪は減らずに筋肉だけが削られて、代謝が低下して逆に太りやすい体質になっていき、BMIは適正でも筋肉が落ちて体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ肥満」になります。(一部省略)
糖質制限のリスク
人間の脳は24時間エネルギー、つまり糖質を使っているので、睡眠後目覚めた朝は低血糖状態です。そこで朝食を抜くとさらに血糖値が下がって体は一気に飢餓モードとなり、できるだけエネルギーを使わない状態にスイッチします。そうして昼食を食べると、備蓄しろ! とばかりに脂肪が増えます。一方で、朝の低血糖時には、脳のために血糖値を上げるホルモンがたくさん放出されるので、血管が収縮し、血圧が上がります。低血糖で、筋肉のエネルギーとなる遊離脂肪酸が増え、血液はネバネバ。グリコーゲンも底をついて脱水状態、血中水分も少ない。結果、血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞のリスクが飛躍的に高まります。
1日に必要な炭水化物量
摂取エネルギー量 × 約50%
<摂取エネルギー量の目安:男性>
30~49歳 2300 kcal
50~59歳 2100 kcal
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