楽して痩せたい‼ キツイ運動も食事制限もしたくない‼
減量を経験された方なら一度はこんな言葉が浮かんだのではないでしょうか?
西村典子(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)氏のコラムを紹介します
本当にカッコイイからだをつくれる?EMSの得手不得手
体に装着するだけで筋トレを行うことが出来るEMSという器具が人気を集めています。
語源は“Electical Muscle Stimulation”。直訳すると、「電気的な筋肉への刺激」となります。もともと医療目的で開発された器具で、ケガで十分にトレーニングができないアスリートのリハビリなど用いられてきました。そして近年では、使い勝手の良さから、スポーツをしない一般の方々にも愛用者が増えているようです。
一般的な運動は、脳から出された電気信号を、神経回路を介して筋肉が受け取って行います。一方、EMSは神経回路をカットして筋肉に電気刺激を直接与えるため、自ら意識しなくても筋肉を連続して収縮させることができます。
「テレビを見ながら」「仕事を見ながら「家事をしながら」といった具合に、ながら運動に適した器具として広まった理由は、この原理に基づいています。
また、複数の部位を連動させて行う一般的な運動に比べて、EMSは特定の部位だけを短時間で鍛えられるので、汗をあまりかかずに済みます。ですから、運動の機会が減った高齢者の筋力維持、飛行機での移動やデスクワークによるエコノミークラス症候群の予防にも役立ちます。
ただ、こうした特徴の一部がひとり歩きしてしまい、誤解されている点もあります。例えば、運動能力の向上。運動は、脳と神経と筋肉が連動して導かれるものです。EMSは筋肉を鍛える効果があるものの、敏捷性やバランス能力など、実際の動きに必要な脳や神経の能力には影響しません。つまり、よく耳にする「運動神経がいい」という表現と、EMSとはほぼ無関係なのです。したがって、スポーツを嗜んでいる人の場合、EMSは補助的に利用するのが適切といえるでしょう。
また、「やせる』という意味でのダイエット効果もあまり個体できません。体重の増減は、摂取カロリーと消費カロリーのバランスの差によって生じますから、いくら筋肉を鍛えてもカロリーコントロールが適切でなければ、やせる効果は望めないのです。しかし、「二の腕のたるみを引き締める」「ヒップアップする」「胸板を厚くする」など、見た目の印象を変える“ボディメイク”には向いています。皮膚の下にある筋肉を鍛えることで、皮下脂肪ごと引上げられるからです。
このように、EMSを利用する際には、原理と特性を理解することが重要です。使用時の肉体的な負担を感じにくいため、いきなり過度なトレーニングを行い、後日激しい筋肉痛に悩まされると言う事例もあるようです。事前に説明書をしっかり読んで、まずはメーカー推奨のレベルで使い始め、慣れてきてから自分にあった負荷や頻度に調整していくのがおすすめです。(partner 2019.3月号)